有利発行

(読み方 : ユウリハッコウ)

有利発行とは第三者割当増資または新株予約権の付与の際に、社会通念上妥当と考えられる価額以下で行われるものをいう。 すなわち、新たに株主になる人に対して、通常よりも有利な条件で株式を発行するということである。

有利発行の具体例

有利発行をわかりやすく言い換えると、会社が株主に対して株式の「安売り」をすることになる。 例えば、本来は1株100円の価値がある株式を、80円の払い込みのみで発行すれば、新たに株式を得た人は20円得をしたことになる。これが有利発行である。

有利な条件の度合い

会社法199条3項では、有利発行について「払込金額が募集株式を引き受ける者に特に有利な金額である場合」と定義している。 この「特に有利な金額」が具体的にどの程度の金額であるのかということについては基本的には妥当価格との乖離幅10%が目安となっている。 つまり、通常の価格の10%を超える安売りに当たる場合には「有利発行にあたる」と判断されるのが一般的である。 より具体的には、第三者割当増資を行うことを決めた日、すなわち取締役会決議の直前営業日の価額に 0.9 を乗じた額以上の価額であれば原則として有利発行に該当しないと考えられ、 0.9 を乗じた額以下の価額であれば原則として有利発行に該当すると考えられている。

有利発行が利用される場面

有利発行は、第三者割当増資を行う際や新株の発行を行う際に選択される資金調達の方法の一つである。 そのため具体的な場面としては、債務超過状態にある会社がその債務超過を相殺するための資金調達を行う場面があげられる。 債務超過の会社に投資することには当然ながら大きなリスクが伴うため、一般的な市場価格では投資家は高すぎると判断し、資金調達は望めないだろう。 だからこそ、財務的に厳しい状況にある会社は、株式を通常よりも有利な条件で発行することによって、なんとかして資金調達を行おうとするのである。 また他の場面としては、オーナー会社において既存のオーナー株主が自分の親族等に対して市場価格よりも低い値段で自社の株式を取得させるような場面も多くある。 しかしこの場合は一種の贈与にあたるため、贈与税が課税されることには注意しなくてはならない。なお、市場価格の払込をさせた上で株式を取得させる場合には贈与にあたらないため、贈与税の課税は生じない。 また少し毛色は変わるが、経営支援の他にも買収防衛のために有利発行が行われる場合もある。(ホワイトナイト)

有利発行の税務

一般的に増資を行う際には課税は生じないため、有利発行を行う際に税務を意識することはあまりない。 しかし、有利発行を用いて第三者割当増資を行う場合に関しては税務についていくつか注意しなければならない点が存在する。 有利発行を行った既存株主の株式価値が新しい株主へ移転した際、法人・個人などのその立ち位置によって異なる税金が発生する。 法人の場合:有利発行により発生した受贈益に対して法人税が発生する 親族以外の個人の場合:有利発行により発生した給与所得、退職所得、一時所得に対して所得税が発生する 親族の場合:親族に有利発行を行った場合は贈与税が発生する。 この際最も注意すべきなのが、有利発行による第三者割当増資や新株割当における課税である。有利発行を用いて第三者割当増資や新株割当を行う際、その増資効果に有利発行を行ったときと同様の経済価値があれば、同額の税金が課せられることを忘れてはならない。

有利発行時の既存株主との利害関係

新規に株主になる人に対して有利発行を行うということは、既存の株主にとっては自身が保有している株式の価値が希薄化することを意味するため、既存株主からの反発は多いと考えられる。 こういった背景から、会社が株式の有利発行を行おうとする際には、株主総会の特別決議が必要とされている。会社法201条1項により、第三者割当増資は本来であれば取締役会の決議だけで行うことも可能ではあるが、有利発行の際は例外となっている。 会社の経営陣と株主とで利害が対立する可能性のある状況であるために、会社法ではより厳しい手続き要件を課しているのである。 なお、有利発行を行うにも関わらず株主総会の特別決議を行わない場合には、株主は株式会社に対して発行差止めを請求できることが、会社法第210条、247条には記されている。

有利発行のまとめ

有利発行は緊急的に行われる資金調達においては時折見られる方法であるが、既存株主の利害との対立が直接的に表れる方法であることから、会社法上は厳しい要件が求められている。 また、税務上の課税関係が生じることも注意だと言えるだろう。

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