選択と集中

(読み方 : センタクトシュウチュウ)

選択と集中とは、複数事業に進出している多角経営事業の会社が、特定の事業に集中するため、特定の分野や領域を選択し、当該分野や領域に対して経営資源を集中的に投入することをいう。

選択と集中のメリット

①競争力の強化

選択と集中による事業の絞り込みにより、1つの事業に対してより多くの経営資源を投入できるため、市場における競争力を強化できる。

②経営の効率化

選択と集中により特定事業に特化することにより、特定の製品の生産量や取引量が拡大し、規模の経済(後述の参考で解説)や経験曲線効果等を享受することで、経営を効率化できる。


選択と集中のデメリット

①人材不足の可能性

選択と集中によって不採算部門を整理する場合、当該部門の中で人員整理の対象になる社員が出てくる。 そのため、優秀な人材が人員整理を機に他社に流出してしまう可能性があり、慰留のため経営資源を集中する部門に異動したとしても、そこに上手く対応できずに去ってしまう可能性がある。

②従業員や株主から反発が起きる可能性

経営資源を集中させるには、当然、大規模な人員整理や再配置を伴い、それによって配置転換を迫られた人々のモチベーションの低下や、不平不満が蔓延する可能性がある。 一方、株主のなかには、経営資源の集中によって、コア事業への依存度が高まり、経営の選択肢が狭まることに不安を覚える可能性がある。

事例:株式会社日立製作所

バブル崩壊以降、業績の低迷が続いていた株式会社日立製作所(以下、日立)は、リーマンショックによる大打撃を受け、2009年3月期に国内製造業で過去最大の約8,000億円の赤字を計上した。 長期にわたる業績低迷を受け、日立が取った戦略はM&Aによる選択と集中だった。 それまでの不採算が続いていた家電事業から撤退し、より採算性が高い情報通信と社会インフラを中心とした法人向けビジネスに経営資源を集中させることにより、経営状況を改善させた。 当時、日立は独立採算性を選択していたため、グループ内での事業が重複してしまい非効率である点や事業を適正に配置できていないことが長年の経営課題だった。 そこで日立はグループ上場会社を完全子会社化し、海外事業の再編にも着手した。具体的には、2012年に連結子会社である株式会社日立GST(グローバルストレージテクノロジーズ)を、アメリカのウエスタンデジタル社に約3,440億円で譲渡した。 なぜなら、当時ストレージの需要は高かったものの、将来激しい市場競争に陥るという懸念点があったためである。 このように日立は採算性の低い事業を切り離し、採算性の高い事業に注力することで、大幅に収益を増加させ成長してきた。 選択と集中により成功した事例の1つと言える。


規模の経済(参考)

規模の経済とは、企業がある事業で大きな事業規模を確保することにより、ある特定の製品の生産量や取引量が増大し、単位当たりのコストが逓減する等、企業活動を効率的にするという経済的効果をいう。 例えば、製品製造用の工場の土地の地代が1ヶ月で10,000円かかるとする(他のコストは無視する)。 1個しか製品を製造していない会社(規模の小さな会社)の単位当たりコストは10,000円、 製品を100個製造している会社(規模が中程度の会社)の単位当たりコストは100円、 製品を10,000個製造している会社(規模の大きな会社)の単位当たりコストは1円、 というように、会社の規模(生産量)が大きくなるにつれて単位当たりのコストは小さくなる。これが規模の経済である。 規模の経済が働く理由としては、 ①事業規模の拡大により製造する製品個数が増加することにより、単位当たりの固定費が低下する ② 大量生産・大量輸送により、原材料費や物流費などのコストを低減できる といった点を挙げることができる。

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