アドバイザリー契約
(読み方 : アドバイザリーケイヤクショ)
M&Aに関する業務をアドバイザリー会社や仲介会社に依頼する際に締結する契約書のことを指す。 多くの場合、売手企業と買手企業が各々アドバイザリー会社や仲介会社と契約を締結する。 M&Aにおいては情報漏洩リスクを防止するため、1社のアドバイザリー会社や仲介会社と専属専任契約を締結することが一般的である。
アドバイザリー契約の契約内容
具体的にアドバイザリー契約の契約書には大きく分けて13項目ある。 以下それぞれについて簡単に見ていく。
①契約締結の対象企業に関する項目
誰と誰の間に結ばれる契約なのかを明示する目的で、ここでは契約締結の対象企業を明確にする。
②業務委託に関する項目
ここでは、業務の委託について定義する。 M&Aはたくさんの要素が絡む行為である。ここではたくさんの要素のうち、どの要素に対してアドバイザリーを行うのかを明確にし、アドバイザリーが取り組むべき仕事を明確にする。
③契約の業務範囲に関する項目
ここでは契約の業務範囲を規定する。 ②で定義した取り組むべき仕事をさらに深掘りし、情報収集、実務手続きの助言、契約書の作成などのアドバイザリーが行う具体的な業務を定義する。
④着手金に関する項目
業務に対し、アドバイザリーを受ける企業がどれだけの金額をいつまでに着手金として支払うのかを規定する。
⑤コンサルティング料に関する項目
業務期間中に支払うコンサルティング料を規定する。 定額制や時給制など、契約内容によって様々である。 また、着手金同様いつまでに支払いを実行するのかについても規定する。 コンサルティング料は着手金とは別である。
⑥業務の費用負担に関する項目
業務の実行の際に発生した費用を誰が負担するかを規定する。 これはコンサルティング料とは別の扱いとなる。 アドバイザリーを受ける企業が支払うケースが多い。
⑦相手方の契約に関する項目
ここでは、当該アドバイザリー契約を実行するために必要な第三者との間にアドバイザリー契約を別に結ぶことが要求される場合には、それが本契約上の義務の範囲内で行われることを確認する。
⑧資料などの提供などに関する項目
アドバイザリーを受ける企業が、アドバイザリーに対して適切な情報共有を行うということと、アドバイザリーは提供された情報を本件業務以外には使用しないこととそれらを適切に管理する義務があることを確認する。
⑨業務の再委託の禁止に関する項目
アドバイザリーはアドバイザリー契約で定義された業務を第三者に委託することを禁止する。 この項目に関しては、承諾を得ればしても良いといった旨の但し書きに留めることも多い。
⑩業務の秘密保持に関する項目
アドバイザリー契約で行われる業務に関連する情報は重要であるため、第三者に開示・漏洩しないよう、秘密保持契約を交わす。
⑪契約の有効期間に関する項目
契約の有効期間を記載する。 契約の延長に関する情報もこの項目に記載する。
⑫アドバイザリー契約の解除に関する項目
何が起きたらアドバイザリー契約を解除するかを規定する。
⑬協議に関する契約に関する項目
契約書に記載のない事項や曖昧な事項については協議を経て決定する旨を記載する。
アドバイザリー契約時の報酬の計算
報酬体系はアドバイザリー契約によって様々である。 代表的なものは以下の4つである。
- 着手金
- 月額報酬
- 中間報酬
- 成功報酬
アドバイザリー契約締結時の流れ
アドバイザリー契約締結の手順は各アドバイザリー提供会社によって多少異なることもある。 売り手側の場合の代表的な流れを以下に示す。
- 1.アドバイザリー契約の流れ
- 2.初期相談
- 3.アドバイザリー契約締結
- 4.企業価値評価
- 5.条件とスケジュールの策定
- 6.企業概要書等作成
- 7.交渉・契約の準備開始
- 8.M&A成約のサポート
アドバイザリー契約締結時の注意点
契約違反時のトラブルに注意
契約違反があった場合の、損害賠償責任については注意深く検討しておく必要がある。 特に、見えない財産として扱われる知的財産権については慎重になる必要がある。 なぜなら、知的財産権は権利関係が複雑に絡み合いやすい上、形が無いため流用がおこりやすいというリスクが潜んでいるからだ。
秘密保持契約の締結
事前に情報漏洩を防ぎ、独自の技術を守っていくためにも、交渉前には必ず「秘密保持契約」を締結する必要がある。 なぜなら、交渉前にM&A当事者が契約書を作成・取り交わせば、情報漏洩のリスクを未然に回避できる可能性が高まるからだ。
アドバイザリー契約のメリット
理想的な相手を選択できる
M&Aにおいては、そう簡単に理想的な買い手など現れないのが現実である。 逆に買い手側としては自社が損しては元も子もないため、十分にシナジー効果が期待できる企業を、市場動向・評価等を踏まえて探す必要性がある。 売り手と買い手が互いにアドバイザリー提供会社を利用すれば、法務・税務などの側面から問題点を検証した上で、それぞれのニーズに合った適切な交渉相手を探してきてくれる。 このような作業は売り手にしても、買い手にしても、自社の事業を行いながら進めるのは困難を極める。専門家のサポートがあれば自社の事業に集中しながら、理想的な相手と交渉ができるのだ。
互いに専門家を立てることで確実な利益を得ることができる
アドバイザリー契約は、売り手側と買い手側が、それぞれ別の専門家(業者)と契約を締結する場合が大半を占める。 M&A仲介会社のように売り手側と買い手側の間にたって調整をするわけではなく、双方のアドバイザリーはそれぞれの立場にたって交渉を行うため、安心感が生まれる。
アドバイザリー契約のデメリット
理想とほど遠い相手が現れることもある
アドバイザリー提供会社の担当者が提案してきた交渉相手が理想とはほど遠いこともなくはない。 アドバイザリー契約を結んだ以上は、自身で交渉相手を探す事が出来なくなるケースが多いため、こうなってしまうと交渉相手がなかなか見つからなくなってしまうこともある。 担当者へ希望が上手く伝わらず、理想の交渉相手が見つからない場合は、解約して別の会社へ頼むか、他のM&Aマッチング方法を検討する必要が生まれる。
アドバイザリー契約には制約も多い
アドバイザリー契約の締結後は、アドバイザリー提供会社の担当者が積極的に動いて必要な段取りを行ってくれる。 しかし、アドバイザリー契約を結ぶことで、制約が課されることも事実であり、それが足かせとなってM&Aの交渉などが上手くいかない場合もある。
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