類似会社比準法
(読み方 : ルイジカイシャヒジュンホウ)
類似会社比準法とは、市場価格が存在しない非上場会社を評価する際、類似した上場会社の株価等を参考に、評価対象会社の企業価値を算定する方法のことをいう。企業評価方法の一つであるマーケットアプローチに分類される。
類似会社比準法のメリット・デメリット
メリット
類似企業や市場の株価をベースとした評価方法であるため、客観的で公平な価値算定が可能な点がメリットである。
デメリット
価値を可能な限り正確に捉えるため、類似企業を複数選定するのが一般的であるが、類似企業が少ない場合は、正確なデータを集められないリスクがあるため、類似企業の抽出が困難となる点がデメリットである。
類似会社比準法を用いた算定の手順
ステップ1:評価対象会社と規模・業種が類似する上場会社を数社選定
上場している会社の中から、事業、財務などの類似性を考慮して、バリュエーションにおける評価対象となる企業と類似している上場企業を複数選定する。
ステップ2:類似上場会社の指標を計算
指標として何を選択するかによって、算出価値が適切に算出できない可能性もあるため、任意の指標は売上高や営業利益、EBITDAなど複数使用するのが一般的である。
ステップ3:指標の倍率を算出
類似公開企業の財務諸表の調整を行ったのち、類似公開企業の各種倍率の算定を行う。評価対象企業の評価を行う場合、算定した倍率をすべて用いる必要はない。
ステップ4:評価対象会社の指標に類似上場会社の指標倍率を適用
上記のように算定された倍率を、評価対象企業の各種財務数値に乗じて事業価値・株式価値を算定する。実際の適用時には、倍率の適用における平均値・中央値の検討等に留意する必要がある。
具体例
ステップ1:経常利益100万円の評価対象会社との類似上場企業を選定する。 ステップ2:経常利益を指標の一つとして検討し、類似企業の株式時価総額1億円・経常利益1000万円とする。 ステップ3:上記類似企業の例を用いて、株式時価総額を経常利益で割った倍率を算定する。 計算式:株式時価総額÷経常利益 = 倍率 実際の計算: 1億円÷1000万円= 倍率10倍 ステップ4:上記類似企業の例を用いて、経常利益に算定した倍率を適用する。 計算式:経常利益×倍率= 株主資本価値 実際の計算: 100万円×倍率10倍= 1000万円
マーケットアプローチとは
マーケットアプローチとは、比較対象となる企業や業界を基準として企業価値を算出する方法であり、評価対象企業の決算書等の数値に係数(一定の率)を乗じて価値を算出する手法である。 マーケットアプローチには、類似会社比準法のほか類似業種比較法などがある。
類似会社比準法の特徴と使用場面
特徴
類似会社比準法は、対象企業の任意の指標に係数を乗じて価値を算出する評価方法のことをいう。 係数は類似企業の株式時価総額を任意の指標で除したものから算出される。 選択した指標や企業によりできるだけ算出価値が乖離するのを防ぐため、任意の指標は売上や営業利益、EBITDAなど複数使用するのが一般的である。 類似企業は複数選定し、算出された価値に乖離の少ないものを選択し、その平均値を算出価値とする。
使用場面
類似企業や市場の株価を基準に評価するため、リアルタイムかつ客観性を持った手法であり、手早く価値を算出したい場面や、上場を目標に置いている場面で利用される。
類似業種比較法の特徴と使用場面
特徴
類似業種比較法は、評価対象の株式と事業内容が類似している上場会社の株式の価額を参考にして、評価対象の非上場会社の1株あたりの評価額を算定する評価方法のことをいう。 評価会社に類似する上場会社の「株価」に、評価会社に類似する上場会社と評価会社の状況を「配当」、「利益」、「純資産」の3つの要素で加味することで、評価会社の株式の適正な時価を求める手法である。
使用場面
国税庁が財産評価のために採用している方法であり、使用されるのは主に相続評価の場面である。 租税法上の公平さと簡便さの観点から誰が算出しても同じ評価結果になるため、相続評価以外の場面での使用、特にM&Aで使用されることは少ない。 なぜなら、誰がやっても同じ評価になる同方法では、売り手と買い手双方の経済合理性がなくなってしまうため、M&Aには不適当とされる。
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