MSCB

(読み方 : エムエスシービー)

MSCB(Moving Strike Convertible Bond)とは、転換価格修正条項付転換社債型新株予約権付社債のことをいう。通常のCB(Convertible Bond)は、転換価格が一定であるが、MSCBは株価を反映して転換価格が修正される条項が付いているため、当該社債の引受け手からすると、株価下落リスクを転換ヘッジすることが可能である。

CBとは

CB(Convertible Bond)とは、転換社債型新株予約権付社債と呼ばれ、株式を一定の条件で発行体の企業の株式に転換できる権利(オプション)が付いた社債のことをいう。

CBの特徴

CBは、保有期間中一定の利息を受け取ることができ、償還日まで保有することで額面金額が払い戻されることから、社債としての特徴を持つ。一方で、株式に転換できる権利を行使することで、定められた転換価格以上に株価が値上がりしたときに利益を得ることができることから、株式としての特徴も持つ。

CBとMSCBの違い

CBは、社債から株式に転換する価格(転換価格)が発行時に決定され、株式分割される場合を除いて、基本的に転換価格が固定されたものである。新株予約権の行使には、転換価格×株式数分の資金の支払いが必要である。そのため、株価が転換価格を上回っている状態で転換してすぐに売却すれば利益を得ることができるが、転換価格を下回っている状態で転換すると損をすることになる。 これに対してMSCBは、発行後一定期間経過する度に、その時点での時価で転換価格を算定し直して修正する条項が付されたCBのことをいう。 この修正条項により、MSCBの引受先は株価の変動によらず常に割安で新株に転換することが可能になる。 そのため、株価が転換価格を上回っている状態となり利益を得やすくなる。

MSCBの修正条項の例

MSCBの修正条項は、転換価格の修正が行われる日と転換価格を決定する条件を予め定めたものである。 以下が修正条項の例である。 (例) 転換価格の修正日: 毎月第2金曜日(決定日)の翌取引日 転換価格の修正: 決定日までの5連続取引日の終値平均値の平均株価×90%

MSCBのメリット

発行体のメリット

第三者割当形式で特定の引き受け手に単独で割当てするため、通常の公募増資と比較して手続きが簡略であり、発行コストを抑えることが可能となることから、機動的な発行及び短期間での反復的な発行が可能である。 また、新株予約権付社債の転換価格に修正条項がついているため、市場環境に応じた株式の発行が可能となる。

引受け手のメリット

株式に転換する際、修正条項により株価の変動によらず常に割安で新株に転換することが可能なため、市場価格よりも有利な株価での取得が可能である。 そのため、発行体が赤字企業だとしても、MSCBの引受先はほぼノーリスクで投資できる。 また、株価が上昇した際には、値上がりによる利益を得ることも可能である。債券投資の安定性と株式投資の成長性を組み合わせた利益が期待できる。

MSCBのデメリット

発行体のデメリット

MSCBを引受けた投資家が空売りを実施し、結果として株価の下落に繋がるリスクがデメリットである。また、MSCBは転換されるまでは負債として扱われるため、財務諸表上では借入金として扱われることもデメリットである。特に負債が多い企業では資金繰りのリスクを高めることになる。

既存株主のデメリット

転換価格が下方修正されることで、株式転換時に得られる株式数が増加するため、株式の希薄化によるEPS等の下落を招き、結果として既存株主の利益が損なわれることがデメリットである。

MSCBにおける株式の希薄化について

株式の希薄化について、発行済株式数が100万株の会社が、発行総額1億円でMSCBを発行したものと想定した場合、下記の計算式で発行株式数が計算される。 発行株式数が増加するほど発行済株式総数が増えるため、1株あたりの利益が減少する。 そのため、転換価格1000円の方がより株式の希薄化の度合いが高くなる。 (例) 転換価格2000円:発行総額1億円 ÷ 転換価格2000円 = 50,000株 転換価格1000円:発行総額1億円 ÷ 転換価格1000円 = 100,000株

MSCBにおける空売りについて

空売りとは、証券会社から株式を借りて売り建て、決済期日までに買い戻して株式を返却し、その差額で利益を狙う取引のことをいう。 売り建てた株価より安く買い戻しできれば、その差額が空売りの利益となる。 MSCBを引受けた投資家は、空売りを実施して結果的に株価が下落すれば、株価に連動して転換価格が低く修正され、より低い価格で転換した株式を返却することで、利益を上げることが可能である。 既存の株主にとっては、結果的に株価が下落することによる損失は発生する。 1億円分を株価2000円の段階で空売りし、株価が1000円に下落して転換価格900円となった場合の計算式は以下の通りである。 (例) 空売り:1億円 ÷ 2000円 = 50,000株 利益:(2000円-転換価格900円)×50,000株= 55,000,000円

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