善管注意義務
(読み方 : ゼンカンチュウイギム)
善管注意装務とは、善良な管理者の注意義務の略であり、社会通念上、一般的に要求される注意義務のことである。 受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う(民法644条)。 したがって、株式会社から委任を受けて職務を執行している受任者である取締役は、その職務を行うにあたって、 善管注意義務を負うのである。
善管注意義務と忠実義務の関係
善管注意義務のよく並べられる法律として、忠実義務というものがある。 忠実義務とは、取締役は、法令および定款ならびに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務をおこなわなければならない(会社法355条)というものである。 ここで、株式会社と取締役との関係は委任に関する規定に従うため、取締役は、株式会社に対して善管注意義務を負う(会社法330条,民法644条)にも関わらず、会社法は,取締役に忠実義務(355条)を課しているため、両者の関係が問題となる。 これに関して忠実義務は、善管注意義務を具体的かつ注意的に規定したものであって、両者は表現の差異があるのみで、内容は異ならないとされている。
株式会社と取締役の利益衝突についての特別の定め
会社法は、取締役の株式会社に対する義務を善管注意義務、忠実義務のように取締役の地位に基づいて認められる一般的義務のかたちで抽象的に規定している。 したがって、株式会社と取締役の利益が衝突する場面で取締役は自己の利益を図ることは許されない。 しかし、会社法は、株式会社と取締役の利益が衝突し、取締役が自己の利益を図る危険が高い場面については、競業避止義務(3561項1号)利益相反取引の制限(356条1項2号3号)、取締役の報酬の規定(361条)といったさらに特別の規定を置いている。
M&Aにおける善管注意義務
取締役の善管注意義務は、会社との委任関係から生じる義務であるため、取締役としての職務執行全てに課される。 そのため、M&Aにおけるデューデリジェンスの要否・十分性、価格、契約内容、実行の意思決定などの判断においても、取締役には善管注意義務が課される。
M&Aのデューデリジェンスにおいての善管注意義務
まずデューデリジェンスとは、対象会社や対象事業について、M&Aを実行するにあたって問題点がないかどうかを調査することである。 デューデリジェンスは、M&Aを阻害する要因等があるかをチェックすることを目的として実行される。 このデューデリジェンスに基づいてM&Aに関する最終契約書は作成されるため、基本合意時に合意した内容の見直しがなされることがしばしばある。 デューデリジェンスでは主に財務状況や事業収益力、法的リスクを検討する。 このようにデューデリジェンスは、M&Aにおいて重要な意味を持っていいるため、デューデリジェンスを行わない、またはそれが十分でないことなどにより譲受企業に損害が発生すれば、譲受企業の取締役が善管注意義務違反であるとして、株主代表訴訟によって責任追及を受ける可能性がある。 デューデリジェンスをどの程度行わなければならないかは、M&Aの規模間によって異なる。"善管注意義務" に関連する用語
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