ADR
(読み方 : エーディーアール)
ADRとは、Alternative Dispute Resolutionの略。 日本語では裁判外紛争解決手続と呼ばれる。 民事上の紛争を解決しようとする当事者のために、公正な第三者が関与してその解決を図る手続きのこと。 弁護士・公認会計士が実施者として選任されて手続きを行う民間型ADRと整理回収機構や中小企業再生支援協議会等の公的機関が調整役となる行政型ADRがある。
増加傾向にあるADR
近年ADRは増加傾向にある。 その理由としては2007年にADR法が施行されてから、ADRの存在が一気に普及したことが大きいと考えられている。
ADRの実施形態
ADRの実施形態は大きく分けて以下の3つに分類される。
- 司法型ADR
- 民間型ADR
- 行政型ADR
司法型ADR
司法型ADRは、民事調停や家事調停などが主な対象となる。 特に民事調停においては裁判所にてADRが行われるが、裁判官が主導権を握る訳では無い。 一般人から選定された調停委員が2人以上含まれた調停委員会が取り仕切る形となる。 なお、専門知識が必要な場合は例外的に調停委員に専門的な知識がある人物を加えることがある。
民間型ADR
民間型ADRは、業界団体や弁護士会などが取り扱い、主に交通事故や近隣トラブルなど民間で起こった問題に対して問題解決を図る。 それぞれ得意分野を持つ企業や団体が認証紛争解決事業者になるため、知識や経験を生かした、客観的かつ公平な意見が期待される。
行政型ADR
行政型のADRは、行政機関などがADRの舵を取って行う。 他のADRよりも特定分野に絞ったものとなる。
事業再生ADRとは
事業再生ADRはADR手続きのひとつに分類される。 目的は過剰債務に悩む事業者の救済である。 専門家が中立の立場として債権者と債務者の間に入って金額や期間などの調整を行うことである。
事業再生ADRを利用する目的
過剰債務により企業が経営難に陥り、倒産してしまう中小企業は少なくない。 このような企業が事業を再生できるよう過剰債務から企業を救済することが、事業再生ADRの目的となる。 具体的には以下のような取り組みをして事業の再生を図る。
- 企業が事業体勢を整えるまでの間に、債務請求が原因で経営難に陥ることを防ぐ。
- 借入先の金融機関に対して減免などを提案し、事業の再生に必要な「つなぎ資金」の借り入れをしやすくする。
ADRのメリット
時間が短い
裁判だと少なくとも半年は時間がかかってしまい、控訴や上告が発生すると裁判が長引くことも十分に考えられる。 しかしADRは解決期間は
- 調停で平均4か月程度
- 仲裁で平均半年程度
低費用
訴訟を起こすとなると弁護士費用などに代表される様々な費用が発生しかねない。 そのため、被害額が少額の場合では、訴訟を起こすと逆に損をしてしまうといったケースはよくある話である。 しかしADRを用いると、費用は安価に済ませることができる。 加えて、ADRの場合では事件の規模が大きくなっても費用がそれほど高額になることはほぼないため、この点もメリットと言えるだろう。
非公開
裁判は原則的に公開裁判であるため、裁判を起こすと情報は公開される。 その一方でADRは原則的に非公開である。過程も判決も非公開であるため、プライバシーを守ることができる。
ADRのデメリット
執行力はない
ADRの場合、話し合いを行い和解策や終着点を見出す形となるが、その判決を否定することができる点には注意する必要がある。 裁判のような絶対的権力による執行力が存在しないため、判決は絶対的ではない。
中立性に欠ける
ADRでは紛争解決にあたる事業者が中立的な立場を守ることができない可能性が高く、手続きの実施者は裁判とは異なり一般人でも容易になることができる。あくまで当事者の話し合いによって解決策を決定していくため、中立的な判断が裁判と比較して難しくなる。
相手が必ずしも応じるとは限らない
裁判の場合は出廷を要求された当事者に拒否権はないが、ADRの場合は当事者に拒否権がある。 そのため、拒否権を行使された場合は調停不成立となってしまう。 また話し合いに至った場合でも、判決に合意してもらえないと、紛争解決が長引く可能性がある。
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