EV
(読み方 : イーブイ)
EVとは、大枠では企業価値を表す言葉である。EnterpriseValueの頭文字を繋げた言葉であり、企業価値と訳されることが大半ではあるが、実際には定義は人によって曖昧である。 参考までに、経済産業省は「会社の財産、収益力、安定性、効率性、成長力等株主の利益に資する会社の属性またはその程度」と定義付けている。一般的には買い手がM&Aや投資を判断する材料の1つとして用いられる。
EVの計算方法
EVは以下の計算式によって算出される。
EV=株式時価総額+有利子負債-現預金 例えばある会社の株価が1万円、発行済み株式数が5万株、有利子負債が3億円、現預金が1億円だと仮定する。この場合のEVは、 (1万円×5万株)+5億円-1億円=9億円 となり、その会社を買収するには9億円が必要ということになる。EV/EBITDA倍率
EV/EBITDA倍率とは、EVをEBITDAで割った値である。 この値をみることで、企業を買収した場合、何年で買収した際のコストを回収できるかを知ることができる。 M&Aにおける買収判断の指標として用いられることが多い。この値は、税率や会計制度などの国固有の影響を受けないため、海外と日本の株価を比較する際の尺度としても用いられる。
平均的なEV/EBITDA倍率の値
EV/EBITDA倍率の値は8〜10である場合が大半である。 そのため、EV/EBITDA倍率が8を割ってくると割安であるということができる。しかし、この値は上場企業のEV/EBITDA倍率を平均して求めたデータであるため、非上場の中小企業においてはこの限りでない。
中小企業のEV/EBITDA倍率の目安
中小企業のEV/EBITDA倍率の平均データはないが、一般的に買収価格に3~5年分の収益を上乗せするケースが多い。 このことから、中小企業の場合はEV/EBITDA倍率が3を割ってくると割安であるということができる。
EV/EBITDA倍率も万能ではない
ここまでで述べた値はあくまで平均値であり、実際のEV/EBITDA倍率は業種によって大きなばらつきがあり、先の述べた範囲に当てはまらない企業も数多く存在する。 このことから、EV/EBITDA倍率のみでその企業が割安かどうかを判断するのは時期尚早であるといえる。EV/EBITDA倍率は大雑把すぎる指標であり、実際に割安かどうかを判断する場合にはあらゆる角度から分析して判断する必要があるといえる。
EV/EBITDA倍率で企業価値を評価するメリットとデメリット
メリット
投資家は営業利益を参考に会社の価値を判断することも多いが、営業利益は減価償却費を差し引いた後の数値であるため、業種によっては実態とはかけ離れた状態と捉えてしまうことがある。 しかし、EBITDAは営業利益に減価償却費や税金などを差し引く前の数値で算出しているため、企業の実態把握をより正確に行うことが可能となる。
デメリット
EV/EBITDA倍率は、過去のデータを参考に作成している。つまり未来の経営数値等は考慮せずに作成されている。また、減価償却費や支払利息に関しても考慮していないため、設備投資や将来の資金調達に関する項目も考慮されていない。 そのため、EV/EBITDA倍率をみて今は割安であると判断したとしても、今後も同じ水準で利益が出続け、計画通り買収した際のコストを回収できる保証はないという点は頭に入れておかなくてはならない。
非上場企業の企業価値算定方法
上場していない企業の価値の考え方は様々ある。 ここでは主要な考え方であるインカム・アプローチ、マーケット・アプローチ、ネットアセット・アプローチの3種類を紹介する。
インカム・アプローチ
評価対象会社から期待されている利益に基づいて評価をするアプローチをする方法である。評価にあたって、信頼性の高いキャッシュフローの計画値が必要となる。 具体的な評価方法としては、フリーキャッシュフロー法、調整現在価値法、残余利益法などがある。
マーケット・アプローチ
上場している同業他社や、類似取引事例などと比較することによって、相対的な価値を評価をするアプローチをする方法である。 評価対象会社が上場会社に匹敵する規模であったり、事業内容や財務内容が類似する上場企業が存在したりする場合には適しているが、新しいビジネスモデルやニッチな業種である場合は適さない場合が多い。 具体的な評価方法としては市場株価法、類似上場会社法、類似取引法などがある。
ネットアセット・アプローチ
主に評価対象会社の賃借対象表上の純資産に注目して価値を評価をするアプローチをする方法である。
評価方法としては単純であるが、帳簿上の価値が実態を表していない場合は不適切であったり、継続事業において将来の企業価値を考慮しづらかったりという側面もある。
具体的な評価方法としては、簿価純資産法、時価純資産法などがある。
それぞれのアプローチには、場合によって向き不向きがあるが、組み合わされて使うこともある。
例えば、純資産の価値に加えて、企業体として収益を生み出しているという継続的価値を「営業権」として算出し、これを加味した価値を企業評価とする方法もある。この方法は、売手、買手双方にとって納得しやすい理論なため、中小企業M&Aにおいて企業評価のデファクトスタンダードになりつつある。
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