ストックオプション

(読み方 : ストックオプション)

ストックオプションとは、あらかじめ定められた期間に株式会社に対して行使することで、株式会社の株式の交付を受けることができる権利のことであり、特に従業員等に報酬として付与されるもののことを指す。 会社の株価が上昇するほど、ストックオプションを行使することによるキャピタルゲインを得ることができるため、従業員等の勤労意欲の向上や離職防止効果がある。

ストックオプションの取引の流れ

①企業は付与対象者である従業員に対し、労働サービス等の提供を対価としてオプションを付与する。 ②従業員等は、対象勤務期間において労働サービス等の提供を行う。 ③従業員等は権利行使期間において ・オプションの権利を行使し、行使価格相当分の払込を企業に対して行う。 ④これを受けて、企業は株式の交付を行う。なお、株式の交付は、株式の発行によることも自己株式の処分によることも可能である。 ⑤ 株式の交付を受けた従業員等は、一定の条件の下に株式を市場に売却し、売却代金を獲得する。

売り手企業におけるストックオプションの取り扱い

以下の2つの場合、M&Aを実施する際にストックオプションの取り扱いが問題となる。

株式譲渡、株式交換、株式移転により売り手企業が完全子会社化する場合

この場合、売り手企業には2つの選択肢がある。 ①買い手にストックオプションを売却する ②ストックオプションを消滅させる 売り手企業の株式は100%子会社化すると全て買い手企業に移るため、ストックオプションは基本的に消滅する。 ただし、売り手企業のストックオプションの保有者(新株予約権者)が新株予約権買取請求権を有する場合があり、その場合は消滅せずに権利行使をすることができる。(会社法第777条) ※新株予約権買取請求とは、ストックオプションの権利保有者が発行会社に対し、保有するストックオプションを公正な価格で買い取ることを請求することができる権利のことで、それを権利行使することで、ストックオプションの権利保有者が、その消滅により不利益を被ることを回避することができる。

合併により売り手企業が消滅する場合

この場合、売り手企業が消滅するときにストックオプションは原則として消滅する。 ただし、この場合も例外的に新株予約権買取請求権を行使することができる。

買い手企業におけるストックオプションの取り扱い

株式譲渡、株式交換、株式移転により売り手企業が完全子会社化する場合

この場合、売り手企業には2つの選択肢がある。 ①売り手のストックオプションを買い取る ②ストックオプションを消滅させる 買い手企業は、株式を100%取得して完全子会社化をする際に、譲渡後に譲渡企業のストックオプションの保有者が権利を行使すると、100%子会社化ができなくなる可能性がある。 そのため、売り手企業のストックオプションをはじめとした潜在株式を処理しておく必要がある。 ※潜在株式とは、一定事由が生じることで会社が新株発行することになる有価証券のことを呼ぶ。新株予約権や新株予約権付社債は、新株予約権が行使された際には新株発行をすることになるため潜在株式に該当する。M&Aにおいては、新株予約権や新株予約権付社債の有無を確認することが重要である。 また、売り手企業のストックオプションを消滅させるときには、以下の2つの選択肢がある。 ・売り手企業のストックオプションを消滅させたままにする ・売り手企業のストックオプションを譲渡企業の従業員に与える 売り手企業のストックオプションに、他の会社の完全子会社となった場合には親会社のストックオプション、もしくは金銭による補償が付与される旨が規定されていれば、これに従う必要がある。 これは、売り手企業の従業員にとってストックオプションは働く上での大きなインセンティブであり、説明なしに消滅させてしまうと会社への不満へとつながりかねないからである。

合併により売り手企業が消滅する場合

この時買い手企業には以下の2つの選択肢がある。 ・売り手企業のストックオプション保有者に対して金銭的補償を行う ・売り手企業のストックオプションを与える 完全子会社になるケースと同じく、売り手企業のストックオプションに、他の会社の完全子会社となった場合には親会社のストックオプション、もしくは金銭による補償が付与される旨が規定されていれば、これに従う必要がある。

ストックオプションの種類

ここでは、ストックオプションの種類やその特徴について紹介する。

通常型ストックオプション

通常型ストックオプションは最も一般的な形態であり、会社の役員や従業員に無償でストックオプションを付与するもののことで、会社の業績が向上したときのインセンティブの意味を持たせたストックオプション。 一般的に、税制適格の要件を満たしており、権利を行使する時点で株価が権利行使価格を上回っていた場合、権利行使価格との差額が報酬となる。 税制適格の要件を満たしていれば、権利行使時には所得税は課税されず、取得した株式を売却し、利益を確定した時点で課税されることになる。

有償型ストックオプション

有償ストックオプションは、通常のストックオプションのように職務の対価として付与されるものでなく、公正価値に基づいた発行価格を払い込むことにより取得できる新株予約権のことをいう。 付与対象者が新株予約権に対して投資を行うためのスキームであるため、付与対象者は自らの判断で新株予約権に投資するか否かを決定することになる。

株式報酬型ストックオプション

株式報酬型ストック・オプションとは、株式を報酬として受け取ることを目的とし、オプションの権利行使価額を低く(通常は1円)設定して、実質的に株式と同等の価値を付与対象者に与えるストックオプションのこと。 例えば、「100株を1円で購入できる」といったほぼ無償で株式を取得できる内容にすることで、権利行使時の株価をそのまま報酬とすることができる。

信託型ストックオプション

信託型ストック・オプションとは、委託者が贈与する意図で、信託行為によって資金を受託者(信託)に預け、受託者が購入した発行会社の時価発行新株予約権を将来、受益者に客観的な業績評価に基づいて新株予約権を配るスキームである。

ストックオプションの活用事例

・楽天株式会社 楽天では、子会社や関連会社も含む役員や従業員に対してストックオプションを付与している。 将来的に100株を1円で購入することができるというストックオプションを発行しており、発行から1年〜10年までに段階的に権利の行使ができるような制限がある。 これは権利行使の制限を段階的に解除することで、従業員の早期退職を防ぐ効果がある。 ・シャープ株式会社 シャープでは、2017年に初めてストックオプションを導入した。 2018年には取締役と従業員20名に対して1045個のストックオプションを与えており、社内の成長、人材の維持・確保や、社員の意識の向上をストックオプション付与の目的として挙げている。

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