ストラクチャー

(読み方 : ストラクチャー)

M&Aにおけるストラクチャーとは、M&Aを実行する際の手段や方法全体を指す。 主要なストラクチャーとしては、株式譲渡、事業譲渡、株式交換、会社分割、合併、第三者割当増資等が挙げられる。ストラクチャーごとに最終的な支配構造や手続きなどが大きく異なっている。

ストラクチャーを検討する際に知っておくべきこと

M&Aを実施する際、ストラクチャーはできる限り早期に決定し、その定められたストラクチャーに則って計画的にM&Aを実行していくことが理想である。 しかしM&Aは、利害関係の裾野が非常に広い。M&Aは、売り手・買い手に加えて対象となっている会社の従業員や経営陣、取引先など、非常に多くの人々に影響が及ぶ行為である。その利害関係の広さから、全ての人の要求を満たすことは非現実的であると言える。 こういった背景もあり、事前に決定したストラクチャーが最後まで変更なくM&Aが実行されることは非常に稀であり、都度変更を加えていくことが大半である。 複数のストラクチャーを比較検討し、各人の利害を上手く調整し、適切なストラクチャーを選択することが大切となる。しかし、大前提としてM&Aを行う目的を見失ってはならない。目的と手段の関係が逆転しないように慎重に選択する必要がある。

ストラクチャー決定に必要な3つの観点

ここからは、ストラクチャーの決定の判断材料となりうる事実を会計・税務・法務の3つの観点から見ていく。

会計

ストラクチャーごとに、財務諸表で言うどの区分にどれくらいの影響が生じるのかを考慮して考える必要がある。 利害関係者が経営者を評価する際、財務諸表をを用いて評価するケースが多い。彼らに対するアカウンタビリティを果たすためにも、ストラクチャー毎に適切なシミュレーションを実行し、それぞれ比較した上で決定することが大切となる。 また、買収後の経営陣の評価指標は財務諸表になるため、ストラクチャーを実行後のいつ、どの段階で、どのような損益が生じるかを前もって把握しておく必要もある。

税務

税制適格要件や、繰越欠損金の使用制限など、課税の発生に大きな影響を与えることになるため、税務的な視点も書くことはできない。ストラクチャーによっては買い手側と売り手側で税額が大きく異なるケースが多々あり、また不測の課税がM&Aの実行後に発生する場合もよく見受けられるので、採用するストラクチャーの課税内容を整理しておくことが大切となる。

法務

M&Aには様々な法律が絡んでいることは言うまでもありません。M&Aを進めていく際には、それらの規則に則った手続きを行う必要があるため、ストラクチャー毎の手続きの概要を把握しておく必要がある。



ストラクチャーのポイント

ここからは、買い手と売り手の目線に立って、ストラクチャーを定める際、具体的に何を検討すれば良いのかについて深ぼっていく。

買い手のポイント

運営形態の検討

・取得対象となる事業 まずは、取得する事業の範囲を定めなくてはならない。対象会社全体を取得対象とするのか、もしくは特定の事業のみを取得対象とするかで大きく2分される。この段階での選択によって、後の進め方が大きく異なってくる。  特定の事業のみを取得する場合には注意を要する。取得対象の会社が通常よりも有利な条件による取引や、親会社のサポートなどメリットを受けていた場合、それらのメリットが得られなくなってしまう、いわゆるスタンドアローン問題が生じかねないからだ。 ・事業の統合形態 統合の形態も検討しなくてはならない。具体的には子会社化したり、合併したりといったことである。 取得対象となる事業が関連性の高い事業を行っている場合には、形式が類似していることが多いため、買い手側が所持しているの同一もしくは類似の事業と統合することが効率的であるため、一般的となる。 その一方で、新規事業への参入の場合やメーカーや小売業などを買収する場合など、買い手側の事業と取得対象の事業の関連性が低い場合には、統合するのでなく、別法人とすることが一般的となる。 ・支配のレベル M&Aでは支配権を取得することが目的ではあるものの、完全な支配、すなわち100%支配が最良とは限らない。案件ごとに支配レベルが異なってくることは十分有りえる話である。

リスクマネジメント

M&Aを実施する際に生じうるリスクは大きくコスト系と不確実性的なものの2つに分割される。 ・コストのリスク 税金の支払いが生じる税務に関するコストや、株式公開買い付けや株主総会の開催などで発生する法務に関するコスト、自社株などではなく現金を必要とする際の資金に関するコストなどに分類される。コストのリスクに関しては、定量化が容易であるため、出来るだけコストが低いストラクチャーを選択することでリスクを減らすことができる。 ・不可実性面のリスク 事業の将来性に関するリスクや、訴訟に関するリスク、簿外債務の承継により想定外の損失が生じる「債務継承に関するリスク」、統合後に税務否認されることによる追加の税負担が発生する「税務否認に関するリスク」などが挙げられます。 コストのリスクとは対象的に、不可実性面のリスクに関しては把握すること自体が難しいため、不可実性の範囲を適切に定義し、できるだけ低減するストラクチャーを選択することが重要となる。

手法

目指すべき運営形態の実現に向けて、手法を検討する。 手法は大きく、株式の取得と特定事業の取得に大別される。 株式の取得に関する手法は、「既存株式の取得」、「第三者割当増資の引受」、「株式交換」、「共同株式移転」が挙げられる。 一方で、特定事業の取得に関する手法は、「現物出資」、「事業譲渡」、「会社分割」、「合併」が挙げられる。

売り手のポイント

運営形態の検討

・譲渡対象となる事業 譲渡対象は、売り手の事業戦略上でノンコア事業か否かで判断されます。 また売り手の場合にも、先の述べたスタンドアローン問題発生の可能性を孕んでいるため、留意する必要がある。 ・投資回収の当事者 譲渡の際、誰が対価を受け取るのかが重要な論点となる。 法人か個人かなのか、小会社か財産保全会社かなどを決定する必要がある。 ・譲渡後の支配のレベル 譲渡後の支配レベルにも、完全切り離し、多数切り離し、共同事業の3つの方法があります。

リスクマネジメント

リスクに関しては、売り手の場合には、不確実性のリスクは存在しない。そのため、コストが最小化されるようなストラクチャーを選択することとなるようにすれば良いということになります。

手法

手法に関しては、買い手の手法の裏返しとなる。

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