退職給付引当金
(読み方 : タイショクキュウフヒキアテキン)
退職給付引当金とは、退職給付会計において、財務諸表の貸借対照表に計上されるもののことであり従業員等に支給すべき退職金の金額のこと。退職給付引当金は退職給付債務から年金資産等を控除して計算される。
退職給付の意義とその性格
退職給付とは、一定の期間にわたり労働を提供したこと等の事由に基づいて、退職以降に従業員に支給される給付のことをいう。退職給付の性格は、以下の3つが挙げられる。
賃金後払い説
退職給付は、労働協約等に基づいて従業員が提供した労働の対価として支払われるものであるため、賃金の後払いと捉える考え方(労働の提供は受けたが、その労働の対価は退職後に支払うため、賃金の後払いと捉えている)
功績報償説
退職給付は、従業員の勤続に対する功績報償として支払われるべきものであると捉える考え方(長期の勤続に対するお礼)
生活保障説
退職給付は、従業員の老後の生活保障として支払われるものであると捉える考え方 「退職給付に関する会計基準」では、「賃金後払い説」を採用している。なぜなら、退職給付は「賃金の後払い」の性格を有していると捉えているためである。
退職給付見込額の算定
退職給付見込額の意義と算定方法
退職給付見込額とは、退職により見込まれる退職給付の総額をいう。 退職給付会計においては、まず従業員の退職時に支払う退職金の額の算定を行う。 また、退職給付見込額は、退職時までに合理的に見込まれる退職給付の変動要因を考慮して見積る。 なお、退職給付見込額の見積りにおいて合理的に見込まれる退職給付の変動要因には、予想される昇給等が含まれる。 臨時に支給される退職給付等であってあらかじめ予測できないものは、事前に退職給付見込額の計算に織り込むことができないため、退職給付見込額に含まれない。
予想される昇給
平成10年の会計基準では、合理的に見込まれる退職給付の変動要因として「確実に見込まれる昇給」等を挙げていた。 しかし、退職給付債務及び勤務費用の計算基礎の1つである予想昇給率について、確実なものだけを考慮する場合、割引率等の他の計算基礎との整合性を欠く結果になると考えられる。 これらを勘案した結果、退職給付会計基準では確実に見込まれる昇給等ではなく、「予想される昇給」等を考慮すべきとしている。
変動要因を考慮する理由
退職給付の計算の際に変動要因が考慮されるのは、実際の退職給付の支払は退職時における退職給付の額に基づいて行われるものであり、現在時点における確定要因のみに基づいて将来の退職給付の額を見積ることは、退職給付の実態を適切に反映させていないと考えられるためである。
退職給付見込額の算定
退職給付見込額は、予想退職時期ごとに、従業員に支給されると見込まれる退職給付額に「退職率」及び「死亡率」を加味して見積る。 ここで、退職給付見込額の計算において、退職事由や支給方法により給付率が異なる場合には、原則として、退職事由及び支給方法の発生確率を加味して計算する。 なお、期末時点において受給権(退職金をもらえる権利:入社間もない時期には受給権がない場合がある)を有していない従業員についても、退職給付見込額の計算の対象となる。すなわち、全従業員が対象になるということである。 退職給付見込額の見積りでは、「合理的に見込まれる退職給付の変動要因には、予想される昇給等が含まれる」ため、予想昇給率等を見積ることが必要である。 よって、退職給付額が給与に比例して定められている退職給付制度の場合、給与が将来どのように上昇するかを推定し、それに基づき算定された昇給額を反映して退職給付見込額を見積る。 さらに、年齢加算金及び役職又は資格に応じて加算される資格加算金等、一定要件を満たした場合に退職給付額に加算される給付金は、年齢等一定要件を満たすことが合理的に予測できる場合にのみ退職給付見込額の見積りに含める。
各期の退職給付の発生額の見積り
各期の退職給付の発生額の見積りの前提
期末時点において、退職給付見込額の全額が企業の負担すべき債務とはならない。期末時点において企業が債務として認識するのは、期末までに労働役務が提供された対価に相当する部分のみである。 このため、退職給付見込額のうち、どれだけが当期までに発生したのかを合理的に見積る必要がある。
適用される方法
退職給付見込額のうち、期末までに発生したと認められる額は、次のいずれかの方法(期間定額基準、給付算定式基準)を選択して計算する(全計基準 以下同様)。この場合、いったん採用した方法は原則として、継続して適用しなければならない。 ①期間定額基準 期間定額基準とは、退職給付見込額について全勤務期間で除した額を各期の発生額とする方法をいう。 ②給付算定式基準 給付算定式基準とは、退職給付制度の給付算定式に従って各勤務期間に帰属させた給付に基づき見積った額を、退職給付見込額の各期の発生額とする方法(会計基準 以下同様)をいう。 なお、この方法による場合、勤務期間の後期における給付算定式に従った給付が、初期よりも著しく高い水準となるときには、当該期間の給付が均等に生じるとみなして補正した給付算定式に従わなければならない。 ※給付算定式:各企業が退職給付を算定するための式(退職金の金額を決定するためのルール)。 検討の結果、期間定額基準が最適とはいえない状況があったとしても、これを一律に否定するまでの根拠はなく、また、国際的な会計基準では給付算定式に従った方法の見直しが検討されていることを踏まえ、適用の明確さでより優れていると考えられる期間定額基準も、給付算定式基準との選択適用という形で認めている。
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