PBR
(読み方 : ピービーアール)
PBRとは、株式時価総額を簿価純資産額で除した率を指す。Price Book Ratioの頭文字を取った言葉であり、日本語では株価純資産倍率と呼ばれる。 株価と株主資本の関係を表しており、PBRが1を下回る場合、すなわち株式の時価総額が簿価純資産額を下回っている場合には、会社を解散して資産を配分したほうが高い価値を得られるということを意味している。M&Aの場面においては企業価値測定の尺度として用いられることがある。
PBRの計算方法
PBRの計算式は以下の通りである。 PBR(倍)=株価÷一株あたりの純資産(BPS) 例えば株価が300円、一株あたりの純資産が100円の場合、300÷100=3となり、PBRは3倍と評価される。 なお、この計算式で用いる一株あたりの純資産(BPS)は、企業の安定性を測る指標である。参考までにBPSの計算式は以下の通りである。 BPS=純資産÷発行済み株式数
非上場企業のPBR
ここからは、非上場中小企業のM&Aの際の計算方法を考えていく。 PBRの計算式とBPSの計算式を併せて考えると、PBRは以下の式に直すことができる。 株価純資産倍率(PBR)=株価÷純資産÷発行済株式数 100%買収M&Aでは全株式を買い取ることになるため、この式は以下の式にまとめることができる。 株価純資産倍率(PBR)=全株式合計価格÷純資産 全株式合計価格は、株式譲渡におけるM&Aにおいては譲渡価格と同義である。そのためPBRは以下の計算式に直すことができる。 譲渡価格純資産倍率(PBR)=譲渡価格÷純資産 この式から、非上場企業をM&Aする際のPBRは、この会社を純資産の何倍で買うかという意味を持っていることがわかる。 これは、譲渡価格を算出する類型の一つである時価純資産法を検討する際の指標となる。時価純資産法の基本は、1.0倍を基準として、それ以上であれば割高、それ以下であれば割安と解釈することが通例となっており、割高で1.0倍を超えている部分は、営業権(のれん)と呼ばれる。 ただし、PBR基準が妥当かどうかを検証する際には、 ①資産の正確性、特に時価と簿価の差異 ②事業における設備の重要 ③M&A後の損益計算予測による調整 ④記載されない資産 に留意しなくてはならない。
PBRの読み方
PBRはその値が1より大きいか否かによって大別される。 ちなみにPBRが1の場合は、株主に分配されるべき1株当たりの額と株価が「釣り合っている状態」を意味する。
PBRが1より小さい場合
PBRが1より低い場合は、株式時価総額が簿価純資産額を下回る状態であり、その株価は、理論上解散した価値よりも割安と読み取ることができる。言い換えると、市場はその企業に対して、継続よりも解散を望んでいるということである。 そのため、株式市場でTOBなどを用いて買収して解散させ、資産を換価して分配を受ければ買収価額以上の分配を受けられるため、PBRが1より小さい場合は敵対的買収の標的となりやすい。
PBRが1より大きい場合
逆にPBRが1より高い場合は、保有している資産負債以外の価値、いわゆる「のれん」を市場が評価している状況と判断できる。
PBRのデメリット
PBRは将来の収益力が反映しにくいため、投資尺度として単独に用いるのは問題がある。しかし、株価の下限を推定する際には一定の指標となりうることは確かである。 PBRが将来の収益力を反映しにくい理由として、PBRは純資産を基にした指標であるため、企業の収益性や成長性を必ずしも正確に評価できない点が挙げられる。 例えば、設備投資を積極的に行っている企業や無形資産の価値が高い企業の評価では、PBRは適切な指標ではない場合がある。 このため、企業の成長ポテンシャルや収益性を反映するEV/EBITDAやPERと併用することで、より包括的な評価が可能となる。 また利益がマイナスとなった場合には、利益に関する倍率は意味をもたなくなってしまうため、実務上利益に関する倍率を補完するツールとして⽤いられることも多い。
PBRとPERの関係性
PBRとPERは株の価値を計る指標である点は共通しているが、その計算方法が異なる。 参考までに、PERの計算式は以下の通りである。 PER(倍) = 株価 ÷ 1株当たり利益(EPS) この式からもわかるように、PBRは株価と一株あたりの純資産を元に算出される一方で、PERは株価と一株あたりの純利益を元に算出されている。すなわち、純資産で比べるか純利益で比べるかという点に違いがある。 PERは純利益を参考にするため、直近の企業の業績を反映しやすい指標である。これは、PBRの短期的な株価変動を捉えにくいというデメリットを十分カバーしていると言えるだろう。 まとめると、より正確な判断をするためにはPBRとPERをうまく組み合わせることが大切だと言える。
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