株式の持ち合い

(読み方 : カブシキノモチアイ)

株式の持ち合いとは、企業間同士で株式を所有することを指す。 経営権の移動や株主の安定化などを目的とし、特にM&Aにおいては敵対的買収の防御策としても用いられる。

株式持ち合いの歴史

ここではまず簡単に、株式持ち合いの歴史について見ていこう。

株式持ち合いの浸透

戦後、財閥解体が行われると同時に、資本の自由化の流れのなかで、外資からの企業買収の危険性が高まっていた。 そこで株式持ち合いによる買収防衛策の強化がなされた。 また、1980年代後半のバブル期には、エクイティ・ファイナンスの受け皿として、株式持ち合いが用いられることも多かった。

株式持ち合いの解消

1990年台のバブル崩壊期には、株式持ち合いを行うことで資金繰りが悪化し、株価下落、業績悪化が顕在化したことで、株式持ち合いが徐々に解消されてきた。

株式持ち合いのメリット

敵対的買収の防御

敵対的買収*は市場に出回っている買収対象企業の株式を取得することで実行されるが、株式の持ち合いによって、自社の味方となるような取引先などに自社株を保有してもらうことで、経営権を奪われないようにすることが可能である。 *敵対的買収はこちらを参照

取引先同士の連携強化

取引関係にある企業同士で株式を持ち合うことは、相互に株価下落のリスクと配当金を受けるという利害が一致するのである。 そのため、お互い相手企業の業績が良好であることを望むため、安定した取引を行うようになり、取引先同士の連携が強化されるのである。

大企業への対抗

中小企業の場合、大企業と比較してリソースが少ないことが往々にしてある。 そのような環境の中で、安定して事業を行っていくために取引企業と株式持ち合いを行うことで、大企業に負けない事業リソースを確保した状態で事業を行うことができる。 取引先同士で株式の持ち合いをすると、お互いの取引網、店舗網、人材、特許、ノウハウの活用など様々なメリットがある。

株式持ち合いのデメリット

株主の適切な意見が無くなる

一般的には株式の持ち合いは友好的な企業同士で行われるものである。 そのため、相手企業側の経営方針に口を出すことはない「物言わぬ株主」となる場合が多い。 こうなると結果として株主総会が形骸化してしまう。 株主が正常に意見を言わないと、会社の経営に悪影響を及ぼしたり、将来性の不安から投資家からの資金調達も難しくなる可能性が高まる。

資本効率の悪化

株式を持ち合うということは自社の資金を使って相手企業の株式を取得するということを意味する。 さらに、経営の安定化が目的であれば株式の大半を取得する必要があり、高額になる場合がある。 本来であれば事業に投下される資本が株式の持ち合いのために使われると、自社の事業が育たずに資本を浪費してしまう形になる可能性もある。 そのため、株式の持ち合いが自社の資本効率にどのような影響を与えるのかを十分精査しなければ単なる浪費となってしまうだろう。

株式の持ち合い解消の手続き

合意形成

株式の持ち合いは相手企業とのビジネス上の取引のため、両者間での合意形成が必要となる。 一方的な解消は良好な関係を崩してしまう可能性もあるため、十分な話し合いのもと時間をかけて合意形成を行うことが大切である。 ただし、経営上スピーディな判断が求められることもあるため一概にはこれが正しいとは言えない。

売却先の決定

株式の持ち合い解消は相手企業の株式をどこかへ売却するということを意味する。 売却先としては第三者企業に引き取ってもらうか、相手企業に戻すかの2パターンある。 前者であれば、株主総会で特別決議が必要となる。 また、非公開株など市場価格が定められていないものに関しては、株式の持ち合い会社同士で合意した売却価額とすることが一般的である。 後者でも、株主総会の特別決議が必要となる。

株式持ち合いの流れ

冒頭でも記述したとおり、バブル期に株式の持ち合いが一般的に用いられるようになったものの、徐々に株式の持ち合いの弊害が顕在化するようになり、解消が進んでいる。 また、株式の持ち合いは日本独特の取引慣行のため、昨今のグローバル化の背景からも、解消は進んでいくものとみられる。

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