役員退職慰労金
(読み方 : ヤクインタイショクイロウキン)
役員退職慰労金とは、役員(取締役や監査役など)として在任していた者に対し、退任時に支払われる退職慰労金である。
役員退職慰労金と退職金の違い
一般的な退職金一般的な退職金は、従業員が勤務先から勤続機関や功績・評価などに応じて「勤労の対価」として受け取るものを指し、就業規則「退職金規程」に基づいて支給される。 役員慰労退職金
役員退職慰労金も「勤労の対価」として支給されるが、退職金規定を作成する必要がない。 ただし、支給額や支払要綱などは定款に定めておく必要があり、定款に定めが無い場合は、株主総会あるいは取締役会において決議する必要がある。 一般的には、定款に支給額や支払要綱を定める事例は少ないため、株主総会あるいは取締役会で決議を行うことが多いのである。
役員退職慰労金のメリット
支給する法人側・支給される役員側の双方に、役員退職慰労金のメリットがある。
法人側
役員退職慰労金については、節税効果がある。 たとえば、法人税の計算については、 益金(収入)ー損金(経費)=所得×法人税率 で計算される。 役員退職慰労金は、全額が損金として算入されるため、所得を圧縮することができ、法人税等の節税効果を期待することができる。 また、役員退職慰労金は社会保険料の適用対象外である。 そのため、法人側が社会保険料を負担する必要がない。
役員側
役員退職慰労金の支給対象となる役員については、その受給額に応じて所得税が課される。 所得税の計算方法は様々あるが、役員退職慰労金は所得に該当し、計算式は (役員退職慰労金支給額-退職所得控除額)×1/2=退職所得金額 となる。 支給された額のうち、支給金額から控除額を控除した金額を半分にすることで税負担を軽減させている。
役員退職慰労金のデメリット
支給する法人側には、役員退職慰労金のデメリットも存在する。 1つ目は、役員退職慰労金を支払った分の資金は減少するので、資金繰りが厳しい企業にとっては財政面から決して芳しくないという点である。 2つ目は、役員退職慰労金は株主総会の決議が必要な点である。 決議がスムーズに進めば問題はないが、うまくいかないケースもある。そのため、企業内部の混乱や職場環境の悪化などを招く原因となる場合がある。
役員退職慰労金の支給手続き
役員退職慰労金を支給するためには、所定の手続きが必要となる。 手続きとしては、会社の事業内容などの根本的な事項を定めた内規である「定款」で役員退職慰労金の支給について予め定めておく必要がある。 定款に定めていない場合は、次の手続きをする必要がある。
株主総会での決議
役員退職慰労金について定款に予め定めていない場合には、株主総会において支給の可否や支給額などが決議される決まりとなっている。 しかしながら、株主総会では取締役会に一任する旨の決議が行われることが多い。 これは、株主総会は一般株主も参加しているため、取締役会において、企業運営の一環として取り決めるほうがスムーズだからである。
損金算入が認められるタイミングは
原則として、役員退職慰労金は株主総会や取締役会などの決議でその額が具体的に確定した時に損金算入が認められる。 基本的には、役員の退職確定日に合わせた時期に損金が算入される。
M&Aと役員退職慰労金
株式譲渡によってM&Aを実行しようとする場合は、現経営者が手にする売却対価の一部を「役員退職慰労金」とする節税手法がよく用いられる。この方法により売り手は退職所得控除を利用し、譲渡所得税を軽減できる。本手法でメリットが得られるのは、売り手の課税関係だけではなく、売却対象となる企業の価値向上にもつながり、ひいては買い手の利益にもなる。 ただし、役員退職慰労金の額が不適切だと、税務署から否認されるリスクがあるため注意が必要である。また、役員退職慰労金の活用には前述のとおり株主総会の決議が必要であるため、事前計画と専門家の助言が重要である。
M&A時に役員退職慰労金を支給するメリット
売り手側のメリット
譲渡所得・退職所得のそれぞれに適用される税制を組み合わせ、節税効果を最大化してより多くの手取り額を得られる。 また、買主側にも節税効果があるため、企業価値の向上を見込むことができる。
買い手側のメリット
損金算入により節税効果が得られる。
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